事務の仕事なら、会社で何年もやってきた。それを在宅の副業にできて、時給もいいなら、と募集のページを行ったり来たりしている。
オンライン秘書(バーチャルアシスタント)は、経営者や個人事業主に代わって、日程の調整やメールの返信、資料づくりなどの事務を、自宅からオンラインで受ける仕事です。やりとりはメールやチャットが中心で、顔も声も出さずにできる仕事もあります。
その時給は、誰が誰に払う金額なのか——そして、秘書の経験がない人には、どんな事務が任されるのか。まずは、募集に書かれた時給の数字が何を指すのかを確かめます。
「時給3,000円台」という料金の見方
オンライン秘書の料金として出てくる金額は、企業がオンラインアシスタントの会社に払う料金です。各社の公式サイトに出ている、依頼する側の料金は下の表のとおりです。
| 会社(依頼する側のプラン) | 月の時間と料金 | 1時間あたり |
|---|---|---|
| フジ子さん | 月20時間で68,640円(税込) | 約3,432円 |
| タスカル | 月10時間で27,500〜44,000円(年間・6か月・3か月のプランで変わる) | 2,750〜4,400円 |
| CASTER BIZ assistant | 月30時間で132,000円(税込・12か月契約。6か月契約は145,200円) | 4,400〜4,840円 |
| HELP YOU | 契約の時間を超えた分は1時間4,000円(税抜) | — |
※各社の公式サイトによる。1時間あたりは、月の料金を時間で割った当ブログの計算です。
会社は、この料金の中から、営業や品質の管理、自社の利益をまかないます。働くスタッフに払われるのは、その残りです。受け取る側の金額を公式に載せている例は少なく、当ブログで確かめられたのは下の表の2つです。
| 出どころ | 働く側の目安 | どちらの金額か |
|---|---|---|
| HELP YOUの求人(1社を1人で受け持つ専属スタッフ、業務委託) | 1時間1,500円(OJT=仕事をしながら教わる期間は1,350円)。事務・バックオフィスの経験3年以上が条件 | 働く側に払われる金額 |
| クラウドワークス「発注相場」の秘書業務 | 1時間1,200円〜 | 発注する側の目安。受け取るときは、ここから利用料が引かれる |
依頼する側の1時間3,000〜4,000円台と、働く側の1,200〜1,500円ほどでは、2倍以上の開きがあります。相場を調べるときは、その金額が「頼む人が払う額」か「受ける人がもらう額」かを、まず見分けます。
オンライン秘書が任される仕事
秘書と聞くと特別な仕事に思えますが、中身は会社の事務と同じものが多く、会社で事務をしてきた人なら、すでに持っている力で受けられます。
| 任される仕事 | 中身 | よく使う道具 |
|---|---|---|
| 日程の調整 | 打ち合わせの候補日を出し、相手とやりとりして予定に入れる | Googleカレンダー、メール |
| 連絡の取り次ぎ | 問い合わせメールの仕分け、決まった返信、チャットでの連絡 | Gmail、Chatwork、Slack |
| データの入力・整理 | 名刺や申込みの内容を表に入れる、顧客リストをそろえる | Googleスプレッドシート、Excel |
| 資料づくり | 手書きのメモや箇条書きを、見せられる資料の形にする | Googleスライド、PowerPoint |
| 経理の手伝い | 領収書の入力、請求書の作成と送付 | freee会計、マネーフォワード クラウド確定申告など |
| 進み具合の管理 | 依頼の一覧を作り、期限と担当を見える形にする | Notion、Trello、Backlog |
道具は、はじめから全部そろえなくてかまいません。依頼する人が使っているものに合わせて、そのつど覚えます。ZoomやMicrosoft Teamsでの打ち合わせに同席して、議事録を任されることもあります。当ブログでクラウドワークスの募集を「議事録」「要約」で探したときも、84件のうち19件は、秘書・アシスタント・事務の仕事の一部として議事録が入る募集でした。
録音から議事録を仕上げる手順と、そこで手元に残る金額は、次の記事で説明しています。
議事録を任される依頼では、会議の録音や文字起こしをもとに整理するAIもあります。NottaのNotta Brainは、Nottaに残した録音や文字起こし、手元の資料を読み込んで、情報の整理や分析、資料づくりを手伝うAIとして、公式に紹介されています。預かった録音や資料をAIに入れてよいかは、依頼する人に先に確かめます。
応募の前に、上の表から自分が受けられる仕事を選び、短い一覧にしておきます。応募文やプロフィールにそのまま使えます。
受けられる仕事の一覧の例
お受けできる業務:〔日程の調整(Googleカレンダー)〕〔問い合わせメールの仕分けと定型の返信〕〔スプレッドシートへの入力と表の整理〕〔請求書の作成(freee会計)〕
経験:〔営業事務として5年〕。〔受発注の入力と、社内会議の日程調整〕を毎日担当していました。
対応できる時間:〔平日20時〜22時、土曜の午前〕。返信は〔その日のうち〕にします。
〔 〕は、自分の経験に合わせて書き換えます。対応できる時間は、あとで「いつでも返事が来る人」と思われないよう、最初の一覧に入れておきます。
仕事を受ける入り口と、最初に選ぶ場所
始めるまでの順番は、下の図のとおりです。受けられる仕事を決めたら、どこから受けるかを選びます。

| 入り口 | すること | 受け取る金額の目安 | 合う人 |
|---|---|---|---|
| 会社に登録する | オンラインアシスタントの会社に、業務委託のスタッフとして応募する | 1時間ごとの支払いが中心(HELP YOUの専属スタッフで1時間1,500円) | 自分で仕事を探す手間をかけたくない人 |
| クラウドソーシングで受ける | クラウドワークスやランサーズで、秘書・事務の募集に応募する | 1時間1,200円〜(クラウドワークス「発注相場」。発注する側の目安) | まず1件受けて、評価をためたい人 |
| 直接、契約する | 知人の紹介やSNSで知り合った経営者と、業務委託の契約を結ぶ | 月3万〜10万円ほど(当ブログの見立てによる目安) | すでに仕事ぶりを知ってもらえている人 |
会社に登録する道では、依頼する人を探すことも、契約や請求も、会社が受け持ちます。その代わり、1時間あたりの金額は、依頼する人が払う料金よりかなり低くなります。応募から稼働までは、書類での選考、面談、事務の力を見る確認を経ることが多く、マニュアルや研修を用意している会社もあります。
| 会社 | 働く人の募集で、公式に書かれていること |
|---|---|
| フジ子さん | 業務委託で、完全在宅のチームで働く。初日のガイダンスや導入のサポート、トレーニングがある。募集する職種は時期で変わり、一般事務の募集を止めていることもあるため、応募の前に募集要項を見る |
| CASTER BIZ assistant | 業務委託のスポットアシスタントとして、決まった作業が得意な人と、幅広い経験で柔軟に動ける人の2つのタイプを募集している |
| HELP YOU | チームで受け持つスタッフと、1社を1人で受け持つ専属スタッフの募集がある(どちらも業務委託) |
※各社の採用ページ・求人ページによる。報酬の金額は、HELP YOUの専属スタッフのほかは、公開されているページでは確かめられませんでした。
クラウドソーシングでは、日程の調整やデータの入力のような1回きりの作業から入り、やりとりが続いた発注者に、月ごとにまとめて受ける形を相談していくのが進めやすい順番です。応募するときは、上で作った「受けられる仕事の一覧」を応募文の最初に置きます。契約したあと、ChatworkやSlackで連絡を取りたいと言われたら、連絡先を伝える前に「サービス外連絡申請」をして、承認を受けます。無断で連絡先を交換すると、クラウドワークスの規約違反になります。どの道でも、契約や作業の進め方を確かめる段階(図の4番目)は飛ばしません。中身は、このあとの「受ける前に決める」章で説明します。
手元に残る金額は、時給×時間から、引かれる分を差し引いて考える
1時間の金額が同じでも、どこから受けるかで、引かれるものが変わります。月20時間(週5時間ほど)受けたとして、手元に残る金額を計算しました。
| 受け方 | 1時間 | 月20時間の報酬 | 引かれるもの | 手元に残る金額 |
|---|---|---|---|---|
| クラウドワークスで、発注相場の金額で受ける | 1,200円 | 24,000円 | 利用料20%と、その消費税(5,280円) | 18,720円 |
| HELP YOUの専属スタッフ(OJTの期間) | 1,350円 | 27,000円 | 会社の支払いの条件は、募集要項で確かめる | — |
| HELP YOUの専属スタッフ(OJTのあと) | 1,500円 | 30,000円 | 同上 | — |
※当ブログの計算です。月20時間は当ブログの見立てによる例です。クラウドワークスの利用料は、同じ発注者との契約金額のうち10万円以下の部分が20%、10万円を超え20万円以下の部分が10%、20万円を超える部分が5%で、別に消費税がかかります。報酬を引き出すときの振込手数料(楽天銀行は100円、ほかの銀行は500円)は含めていません。
クラウドワークスで受けた場合、報酬の約2割が利用料として引かれます。1時間あたりに直すと936円です。同じ発注者から続けて受け、契約の金額が10万円を超えた分からは、引かれる割合が下がります。1回きりの仕事を多くの発注者から受けるより、同じ人から続けて受けるほうが、手元に残る割合は上がります。
直接の契約では、間に入る会社やサイトがないので、引かれる手数料はありません。そのかわり、契約書を用意すること、請求書を出すこと、入金を確かめることを、すべて自分でします。
クラウドワークスとランサーズで、契約の金額ごとに手元に残る額を比べた表は、次の記事にあります。
会社員が副業でオンライン秘書をする場合、副業の所得(収入から経費を引いた金額)が年20万円を超えると、所得税の確定申告が要ります。20万円以下のときも、お住まいの市区町村への住民税の申告は要ります。取引先が会社のときは、インボイス(適格請求書)の登録を求められることがあり、登録すると、所得が少なくても消費税の申告と納税をすることになります。通信費やパソコンの費用、仕事で使う道具の利用料は、経費にできる場合があります(家庭と分けて使っている割合で分けることもあります)。
帳簿と申告の書類を作るソフトをどう選ぶかは、次の記事にまとめました。
依頼を受けてから返すまで。AIに下書きを任せる作業と、自分でする作業
1件の依頼は、依頼の中身を確かめる → 下書きを作る → 見直す → 送る・登録する → 作業の記録を残す、の順に進みます。このうち下書きを作る部分は、生成AIに任せやすいところです。
たとえば日程の調整では、依頼する人から候補の日時を聞き、相手に送る連絡文を作ります。AIに頼むときは、相手の名前や会社名を〔A社〕のような仮の文字に置き換えてから入れます。
指示文の例(日程の調整の連絡)
〔A社の担当者〕に、打ち合わせの日程を相談するメールの文面を作ってください。候補は〔10月28日(火)14時〜15時〕〔10月29日(水)10時〜11時〕〔10月30日(木)16時〜17時〕の3つで、オンラインで行います。ていねいで短い文にしてください。候補の日付と曜日が合っていないところがあれば、文面とは別に〔要確認〕として書き出してください。
出てきた文面は、日付と曜日、時刻、会議のURLを、カレンダーと見比べて1つずつ確かめます。仮の文字を本当の名前に戻し、依頼する人の普段の言い回しに合わせてから送ります。
毎月くり返す作業を、手順書にまとめる場面でも使えます。手順書があると、依頼する人が中身を確かめやすく、自分が休むときに引き継ぐこともできます。
指示文の例(くり返す作業の手順書)
次のメモは、毎月〔月末〕にする〔請求書の作成と送付〕の作業を、私がした順に書いたものです。これを、初めての人が読んでも同じ作業ができる手順書にしてください。1行に1つの操作を書き、番号を付けてください。「どの金額にするか」「誰に送るか」のように、その場で判断が要るところには〔依頼者に確認〕と付けてください。メモに書いていない操作は足さないでください。
メモ:〔ここに、自分の作業メモを貼る。会社名・金額・メールアドレスは消しておく〕
手順書の下書きができたら、実際にその順で作業をして、抜けている操作がないかを確かめます。〔依頼者に確認〕が付いたところは、依頼する人に決めてもらいます。
反対に、AIに任せず、自分の手でする作業もあります。
| 自分でする作業 | 理由 |
|---|---|
| メールの送信、予約の確定、支払いの手続き | 押したあとに取り消せず、間違えると依頼する人の信用にかかわる |
| ログイン情報やパスワードの入力 | AIのツールに書き込むと、預かった情報を外に出すことになる |
| 顧客リスト・経理のデータの扱い | 名前や金額が入った表は、AIに入れず、決められた場所の中で作業する |
| どの依頼を先にするかの判断 | 依頼する人の事情を知っているのは自分で、AIは知らない |
AIを使ってよいかは、依頼する人が決めます。クラウドワークスは、AIを使って仕事をすることを禁止しておらず、受注者と発注者の間の取り決めに任せています。そのうえで、使う前に発注者に確かめること、使っていることを隠さないこと、機密性の高い情報をAIのツールに入れるときは扱いに気をつけることを、受注者に求めています。会社に登録して受ける場合も、使ってよいか、どのツールならよいかを、会社の担当者に先に聞いておきます。
日程の連絡や手順書のように、毎日の事務に合わせた頼み方を自分で考えるのが手間なら、講座で学ぶ道もあります。DMM 生成AI CAMPでは、「学び放題」のプランが月額16,280円(税込)で、月額のプランは、やめる時期を縛られません。どの講座が入っているかは、申し込む前に公式サイトの一覧で見ておきます。
受ける前に、範囲・時間・預かる情報の扱いを決める
オンライン秘書は、同じ人の事務を続けて受ける仕事です。最初に決めておかないと、頼まれることが少しずつ増え、1回きりの仕事より困りごとが起きやすくなります。
- どこまでを、月に何時間、いくらで受けるか: 受ける仕事の範囲と、月の時間、金額を、契約の前に書面で決めます。決めた範囲の外の依頼が来たら、そのつど「範囲の外なので、金額を相談させてください」と返します
- 業務委託と雇用の違い: 業務委託では雇われるわけではないので、労働基準法の対象にはならず、依頼する人も、働く時間や場所を細かく指示することはできません。契約書は業務委託なのに、毎日決まった時間ずっと待機するよう求められる、作業のたびに細かく指示される、といった状態になっていたら、偽装請負に近い形になっていないかを見直します
- 秘密を守る約束: 秘密保持契約(NDA)を結ぶときは、何が秘密にあたるか、契約が終わったあと何年守るのか、破ったときの違約金があるかを読んでから署名します
- パスワードと端末: 預かったログイン情報は、パスワード管理のツールに入れ、二段階の認証を設定します。家族と共用のパソコンは使わず、仕事用のアカウントや端末を分けます。会社に登録して受ける場合は会社の決まりを確かめ、直接の契約では依頼する人と決めます
- 作業時間の記録: 1時間ごとの支払いでも月ごとの定額でも、何の作業に何分かかったかを、日報や時間を記録するツールに残します。範囲や金額を見直す相談をするときの材料になります
会社員が本業のかたわらで受けるときは、返事ができる時間帯と曜日を、最初の契約で伝えておきます。続けて受けるうちに、昼間でもすぐ返事が来ると思われることがあるからです。
対応できる時間の伝え方の例
ご連絡は〔平日20時〜22時と、土曜の9時〜12時〕に確認し、お返事します。それ以外の時間にいただいたご連絡は、次の対応時間にお返事します。〔取引先からの急ぎの連絡〕など、すぐに対応が要るものがあれば、事前にご相談ください。
1回きりの作業から、続けて任される形へ
続けて任されるかどうかは、1回の作業の出来より、返事の速さと間違いの少なさで決まります。最初の数件は、約束した時間に返し、終わったら「何をしたか」「確認してほしいところ」を短く報告します。
任される仕事が増えてきたら、記録した作業時間をもとに、範囲と金額を見直す相談をします。月ごとの定額で受けているのに、作業の時間が契約より増えたままにしておくと、1時間あたりの金額が下がっていくからです。英語でのやりとりや、ホームページ・SNSの更新の手伝いのように、事務に専門の力を足せると、金額の相談もしやすくなります。
直接の契約は、知人の紹介やSNSでのつながりから始まります。会社やクラウドワークスで続けて受けた経験と、作業の記録があれば、紹介を受けたときに見せられます。契約書には、受ける仕事の範囲、月の時間と金額、秘密を守る約束、契約をやめるときの決まりを入れます。クラウドワークスでは、直接取引を目的にサイトの外で連絡を取ることが認められていないので、直接の契約は、サイトの外で知り合った人と結びます。
まずは、任される仕事の表から自分が受けられるものを選び、受けられる仕事の一覧を書いてみてください。




