音声を自動で文字にするAIがあるのに、文字起こしの仕事はまだ人に頼まれているのでしょうか。
文字起こしとデータ入力は、頼まれた音声や資料を、決められた形の文字やデータにする仕事です。パソコンで文字が打てれば始められ、顔も声も出しません。
AIが広まったいま、人に頼まれているのはどの部分なのか。「データ入力」という名前の募集には、どんな仕事がまじっているのか。応募ボタンを押す前に、募集の中身をのぞいてみましょう。
AIが文字にする今、人に頼まれている作業
どちらの仕事も、企業や個人が自分たちでは手が回らない作業を、外の人に頼むものです。受け取るものと納めるものは、仕事ごとに決まっています。
| 仕事 | 受け取るもの | 納めるもの |
|---|---|---|
| データ入力 | 紙の資料、PDF、Webサイトの情報、入力先の表 | ExcelやGoogleスプレッドシートなどに入力したデータ |
| 文字起こし | 会議、インタビュー、動画などの音声 | 話した内容を文字にした原稿(Wordなど) |
報酬は、データ入力なら「1件いくら」、文字起こしなら「音声1分いくら」「1本いくら」のように量で決まるものと、作業した時間で決まるものがあります。資格は要りません。
音声を文字にするところは、AIのツールでもできます。それでも仕事が残っているのは、AIが作るのは下書きまでで、そのまま納められる原稿になるとは限らないからです。

図の「人がする」段階で、具体的に手を動かすのはこうした作業です。
- だれの発言かを分ける:声が重なったところや、似た声を聞き分ける
- 人名・会社名・数字を確かめる:資料や検索で、正しい書き方を確かめる
- 聞き取れないところを、推測で埋めない:決められた印や、時間(何分何秒)を付ける
- 頼まれた形に整える:言いよどみを残すか取るか、文を直すか
データ入力も同じです。資料を読み取って文字にするところはソフトでもできますが、読み違いや、行のずれを見つけて直すのは人です。「正確かどうかを確かめて、責任を持つ」部分が、お金を払って頼まれる仕事として残っています。
「データ入力」の募集に並ぶ仕事
仕事は、発注する人と受ける人をつなぐサイト(クラウドソーシング)で探します。当ブログで、クラウドワークスの「データ入力」のカテゴリにあった募集中の405件を、2026年10月に題名で分けました。表にデータを打ち込む仕事は、そのうち3件に1件ほどでした。
| 題名から分かる作業 | 件数 | 例 |
|---|---|---|
| 入力・転記・リスト作成 | 131件 | PDFの内容を表に打ち直す、会社名を調べて一覧にする、商品の情報を登録する |
| 営業の連絡を送る作業 | 126件 | 企業の問い合わせフォームに文章を送る、SNSでメッセージを送る、電話をかける |
| 題名だけでは作業が分からない | 108件 | 「事務サポート」「在宅スタッフ募集」など |
| 監修者の募集、アンケート、工事の書類など | 24件 | 専門の資格や経験がある人に向けた募集 |
| SNSの投稿 | 16件 | 用意された文章や画像を投稿する |
※2026年10月、当ブログ調べ。題名に入っている言葉だけで分けた、ある1日の結果です。中身まで読めば、ほかの区分に移る募集も出てきます。
営業の連絡を送る作業は、入力の仕事とほぼ同じ数がありました。決まった文章をくり返し送る仕事で、表にデータを打つ仕事とは中身が違います。応募先は、カテゴリの名前ではなく、題名と募集文で「何を見て、どこに、何を打つのか」を確かめて選びます。
入力の仕事の中にも、未経験から入りやすいものと、表計算の知識が要るものがあります。
| 種類 | すること | 未経験からの入りやすさ |
|---|---|---|
| 転記 | PDFや紙の資料を見て、同じ内容を表やWordに打つ | 入りやすい |
| リスト作成 | 条件に合う会社や店をWebで調べ、名前や住所を一覧にする | 入りやすい。調べる時間で差が出る |
| 商品・情報の登録 | 通販サイトなどの管理画面に、商品名や価格を入れる | 入りやすい。画面の使い方を覚える |
| データの確認・整理 | 入力済みのデータの抜けや重複を見つけて直す | Excelの並べ替えや関数が使える人向け |
文字起こしをしたい人も、データ入力の募集をあわせて見る
同じ日に、「テープ起こし・文字起こし」のカテゴリの募集中の44件も分けました。音声や動画を聞いて文字にする募集は17件で、残りは、PDFなどの資料をWordに打ち直す仕事が13件、営業の電話が9件、画像の作成とSNSへの投稿が5件でした(2026年10月、当ブログ調べ)。
募集中の数で比べると、データ入力は文字起こしの9倍ほどありました(2026年10月、当ブログ調べ)。音声を聞く仕事がしたい人も、まずは転記の仕事で1件目の実績を作り、文字起こしの募集が出たら応募する、という順に進めると、応募できる先が見つかりやすくなります。
文字起こしの仕上げ方と、それぞれの金額
文字起こしの仕上げ方には3つの形があり、同じ発言でも、納める文が変わります。
| 形 | すること | 同じ発言を書いた例 |
|---|---|---|
| 素起こし | 言いよどみや言い直しも、聞こえたとおりに書く | えーと、あの、来月の、来月のイベントなんですけど、まあ、会場はまだ決まってなくて |
| ケバ取り | 「えーと」「あの」などを取る | 来月のイベントなんですけど、会場はまだ決まってなくて |
| 整文 | 読みやすい文に直す | 来月のイベントについては、会場がまだ決まっていません。 |
ランサーズは「仕事の種類・参考価格」で、形ごとの音声1分あたりの金額を示しています。
| 形 | 音声1分あたり |
|---|---|
| ケバ取り | 90〜200円 |
| 素起こし・整文 | 150〜240円 |
| 要約 | 190〜260円 |
※ランサーズ「仕事の種類・参考価格」より。公式も一例としており、実際の金額は依頼ごとに決まります。
文に手を入れる形ほど、金額は高めに示されています。募集文に形が書いてあればそれに合わせ、書いていなければ、応募の前にどの形かを聞きます。形が分からないまま受けると、仕上げたあとで全部を直すことになりかねません。
整文を続けるうちに、聞いた話を整えるより、自分の体験や考えを文章にするほうが合いそうだと感じたら、Webライティングという始め方もあります。こちらは、次の記事で説明しています。
AIに練習の材料を作らせて、自分の速さを測る
1件いくら、1分いくらという金額が割に合うかどうかは、自分が1時間にどれだけ進められるかで決まります。応募の前に、30分ほどで測っておきます。用意するのは、パソコン、インターネット、表計算のソフト(Googleスプレッドシートは無料)、文字起こしを測るならイヤホンかヘッドホンで、新しく買いそろえるものはほとんどありません。
練習の材料は、AIのチャット(ChatGPTやClaudeなど)に作らせることができます。架空の内容なので、預かったものをAIに入れる心配がなく、答え合わせの元にもなります。
データ入力:架空の名刺を20件作らせて、表に打つ
指示文の例(データ入力の練習)
データ入力の練習に使う、架空の名刺の情報を20件作ってください。項目は、会社名、部署、氏名、電話番号、住所の5つです。実在する会社や人の名前は使わないでください。練習になるように、「株式会社」が前に付くものと後ろに付くもの、全角の数字と半角の数字、ハイフンのない電話番号を、ところどころに混ぜてください。表ではなく、名刺に書かれているように、1件ずつばらばらの文章で出してください。
出てきた20件を、スプレッドシートに自分の手で打ち込みます。ここはAIに任せません。打つ前に「数字は半角」「電話番号はハイフンあり」のように、自分で決まりを1つ決めておくと、実際の仕事の「表記の指定」に近い練習になります。打ち終わったら、元の文章と1件ずつ見比べ、かかった時間と間違えた数を書き留めます。
文字起こし:言いよどみ入りの台本を作らせて、読んで録音する
指示文の例(文字起こしの練習)
文字起こしの練習に使う、2人の会話の台本を作ってください。町内会のお祭りの準備を話し合う場面で、声に出して読むと5分ほどの長さにしてください。「えーと」「あの」などの言いよどみと、言い直しを、ところどころに入れてください。人の名前、日付、金額を、それぞれ3つ以上入れてください。
台本を自分で読み上げてスマホで録音し、台本を見ずに、録音を聞きながら素起こしをします。終わったら台本と見比べると、聞き落としや、名前と数字の書き間違いがそのまま分かります。続けて同じ原稿をケバ取りの形に直すと、形を変える作業にかかる時間も測れます。
測った数字を、1時間あたりの量に直す
20件の入力に15分かかったなら、1時間に80件のペースです。5分の録音を起こすのに35分かかったなら、音声の長さの7倍で、60分の音声には7時間ほどかかる計算です。当ブログの見立てでは、文字起こしは慣れないうちは音声の長さの6〜8倍、慣れた人で3〜5倍ほどが目安なので、測った倍率がこの幅のどこにあるかも見ておきます。
測った速さを、1時間あたりの手取りに直す
「1件いくら」の仕事は、1時間に何件できるかで、1時間あたりの金額が決まります。測った件数の列を見ると、その仕事を受けたときの見当がつきます。
| 1件の金額 | 1時間に30件 | 1時間に60件 | 1時間に120件 |
|---|---|---|---|
| 5円 | 150円 | 300円 | 600円 |
| 10円 | 300円 | 600円 | 1,200円 |
| 20円 | 600円 | 1,200円 | 2,400円 |
| 50円 | 1,500円 | 3,000円 | 6,000円 |
※当ブログの計算です。利用料を引く前の金額で、クラウドワークスの場合、手取りはこの78%になります。
同じ1件10円でも、1件に2分かかる作業なら1時間300円、30秒で済む作業なら1,200円です。1時間80件の人なら、1件10円の仕事で約800円(利用料を引く前)になります。募集を見たら、1件に何項目あるか、調べものが要るかを確かめてから、この表に当てはめます。
文字起こしは、60分の音声を1分100円(6,000円)で受けた場合で計算します。ランサーズの利用料16.5%を引くと、手取りは5,010円です。
| 60分の音声にかかった時間 | 1時間あたりの手取り |
|---|---|
| 8時間 | 626円 |
| 6時間 | 835円 |
| 4時間 | 1,252円 |
| 3時間 | 1,670円 |
※当ブログの計算です。手取り5,010円を、かかった時間で割っています。
練習で7倍かかった人なら、この仕事は1時間あたり700円台です。金額の高い形で受けるか、慣れて倍率を下げるかで、この数字が変わります。
相場と、時間で決まる募集の金額
サイトが依頼する側に示している相場と、実際に出ていた時間で決まる募集の金額も、比べる材料になります。
| 出どころ | データ入力 | 文字起こし |
|---|---|---|
| クラウドワークスの発注相場 | 1時間1,000円〜 | 5,000円〜 |
| ランサーズの参考価格 | 100件で1,000〜10,000円 | 音声1分あたり90〜260円 |
| 当ブログが2026年10月に数えた、時間で決まる募集(データ入力45件、文字起こし10件) | 示された金額の幅は、下の端の中央値が1時間1,500円、上の端の中央値が2,000円 | データ入力と同じく、1,500円と2,000円 |
※公式の相場は、依頼する側に向けて示されている金額です。中央値は、金額を小さい順に並べたとき、ちょうど真ん中に来る値のことです。
時間で決まる募集は、件数で決まる仕事のように速さで金額が変わらない代わりに、作業した時間の記録が求められます。
受け取る報酬からは、サイトの利用料が差し引かれ、手元に入る額はサイトによって違います。
| 仕事の金額 | クラウドワークス | ランサーズ | シュフティ |
|---|---|---|---|
| 1,000円 | 780円 | 835円 | 900円 |
| 3,000円 | 2,340円 | 2,505円 | 2,700円 |
| 5,000円 | 3,900円 | 4,175円 | 4,500円 |
※当ブログの計算です(クラウドワークスは、10万円以下の部分の20%に消費税を足した22%、ランサーズは16.5%〔税込〕、シュフティは報酬額の10%)。シュフティは、免税事業者の場合、別に経過措置による加算があるため、表より少なくなります。出金のときの振込手数料は、この金額に含めていません。
預かった音声・資料とAIの使い方
練習と違い、仕事で預かる録音や資料には、会議やインタビューなど外に出せない内容が入っていることがあります。AIのツールで下書きを作るかどうかは、自分ではなく発注者が決めます。
クラウドワークスの「AI活用に関するポリシー」では、AIの利用そのものは禁じられておらず、使うかどうかは仕事ごとの取り決めで決まります。受ける人に求められているのは、募集文やメッセージで示された「使ってよいか、だめか」を守ること、書かれていなければ先に聞き、使ったことを隠さないこと、預かった情報をAIに入れるときは扱いに気をつけること、AIを使っても使わなくても約束した品質を守ることです。
無料のAIのツールに、預かった音声をそのまま入れるのは避けます。ツールによっては、入れた音声が学習に使われることがあるためです。
| ツール | 公式の記載 |
|---|---|
| LINE WORKS AiNote | フリープランは、録音した音声データがAI技術の性能向上に使われる場合があることに同意して利用する |
| Notta | 音声認識エンジンの学習に、ランダムに選ばれたデータが使われる。「AI学習なし」の環境は、エンタープライズプランとビジネスPlusで提供 |
※各公式サイトの記載による。ほかのツールは、利用規約で確認してください。
無料のプランは、自分の声で練習するためのものと考えます。預かった音声は、発注者に確かめたうえで、学習に使われないプランや設定で扱います。ツールごとの料金と、無料で使える範囲は、次の記事で比べています。
AIを使うかどうかにかかわらず、預かったものの扱いには決まりがあります。
- 預かった資料や音声を、外に出さない:家族と共用のパソコンや、外の共用のWi-Fiでは作業しません。発注者に確かめずに、AIのツールや翻訳サイトに入れません
- 終わったら消す:音声ファイルと原稿は、発注者の指示に従って削除します
- サイトの外で契約しない:クラウドワークスは、サービスの外で直接契約して報酬を受け取ることを、利用規約違反としています
- 報酬の預け入れ(仮払い)の前に、作業を始めない:先に作業を求められたら、応じません
クラウドワークスは公式ブログの注意喚起で、低い金額で契約したあとにLINEなどで別のサービスへ誘う依頼や、高額なスクール・情報商材の販売が目的の募集に気をつけるよう呼びかけています。「未経験者歓迎」の募集が多いジャンルなので、応募の前に、作業の中身と支払いの流れを確かめます。
最初の1件を探すサイトと募集
最初の1件は、クラウドワークスで、転記の募集から探します。仕事を探すサイトは、どれも登録は無料で、違いは引かれる利用料です。
| 項目 | クラウドワークス | ランサーズ | シュフティ |
|---|---|---|---|
| 登録 | 無料 | 無料 | 無料 |
| 引かれる利用料 | 契約金額(税込)の22%(10万円以下の部分) | 契約金額(税込)の16.5% | 報酬額の10%(免税事業者は、別に加算があります) |
募集を2026年10月に数えた日のクラウドワークスでは、入力・転記・リスト作成の募集が131件ありました。登録から最初の入金までの手順は、次の記事にまとめました。応募者の少ない募集の見つけ方、プロフィールと応募文の例、応募しないほうがよい募集の見分け方も載せています。
手数料と振り込みの条件を、サイトごとにくわしく比べたい人は、次の記事を見てください。
続けるときの仕事の広げ方
同じ時間で入る金額を増やす方法は、同じ量を速く仕上げることと、金額の高い形や仕事に移ることです。当ブログでは、こんな順に進めるのがよいと考えています。
| 段階 | すること |
|---|---|
| 1〜3件目 | 期日を守り、間違いのないものを納める。全角と半角、日付の書き方、仕上げの形を作業の前に確かめ、はじめの10件ほどを先に見てもらうと、直しの依頼が減る |
| 同じ発注者から続けて頼まれたら | 続きの仕事を優先して受ける。探す時間と、やり方を覚え直す時間が減り、1時間あたりの金額が上がる |
| 実績が数件たまったら | 時間で決まる募集に応募する |
| 文字起こしを続けるなら | ケバ取りだけでなく、整文や要約まで受ける |
| データ入力を続けるなら | 入力だけでなく、データの確認・整理・集計まで受ける。Excelの関数を1つずつ覚える |
| その先 | 本業で身についた知識(医療、法律、経理、ITなど)を使える分野を選ぶ。専門の言葉が分かる人は、聞き間違いや入力の間違いに気づきやすい |
文字起こしから要約へ広げるときは、会議の録音を議事録の形にまとめる仕事が候補になります。こちらは、次の記事で説明しています。
報酬が入り始めたら、金額と引かれた利用料を控えておきます。会社員が副業をしている場合、副業の所得(売上から経費を引いた金額)が年間20万円を超えると確定申告が必要で、20万円以下でも住民税の申告は必要です。利用料や、AIのツールの利用料、イヤホンなどの代金は、経費として記録できる場合があります。会計ソフトの選び方は、次の記事で整理しています。
まずは名刺20件か、5分の台本で自分の速さを測り、その数字を持って募集を見てみてください。登録から最初の1件を納めるまでの手順は、次の記事で確かめられます。







