毎日使っているNotionのページや、Canvaで作った資料を見て、ふと「これ、人に売れないかな」と思う。そんな思いつきから始められるのが、テンプレート販売です。
作ったページやデザインを、ほかの人がそのまま使える形にして売ります。注文を受けて作る仕事ではないので、締め切りも、やり取りする相手もありません。
ただ、いざ出品しようとすると、迷う点がいくつも出てきます。NotionとCanvaで、売れるものは同じか。Canvaのデザインなら、どれでも売ってよいか。自分の記録が入ったページは、何を直せば売り物になるか。売れたら、手元にいくら残るか。最初の分かれ道は、どちらのツールで作るかにあります。
NotionとCanvaのテンプレートの違い
Notionのテンプレートを買う人がほしいのは、家計簿やタスク管理のような「記録の続け方」です。Canvaのテンプレートを買う人がほしいのは、名刺やSNSの投稿、資料の「見た目」です。
| Notionのテンプレート | Canvaのテンプレート | |
|---|---|---|
| 売るもの | 家計簿、タスク管理、読書ログなどの、ページとデータベースの組み合わせ | 名刺、SNSの投稿、プレゼン資料などのデザイン |
| 作る手間 | いま使っているページを整えれば、形になりやすい | 白紙から配色、文字、配置を決める |
| 要る操作 | Notionの基本の操作 | Canvaの基本の操作と、配色や配置の基礎 |
| 規約で気をつけること | ほかの人のテンプレートをもとにするときは、配布元の利用条件 | 既存のテンプレートを流用しない。有料素材を含むものは売り方が限られる |
| 合う人 | ふだんからNotionで記録や管理をしている人 | デザインの道具を触り慣れている人 |
当ブログの見立てでは、Notionでは家計管理とタスク管理の人気が高く、「自動で計算される」「書き漏らしが減る」のように、続けやすさを打ち出したテンプレートが選ばれやすい傾向があります。読書ログや、個人事業主の業務管理のように、探す人は少なくても競う相手も少ない分野もあります。Canvaでは、美容、飲食店、ハンドメイド作家、求人採用など、小さなお店や個人が毎日のように使うSNS投稿のデザインに需要が見込めます。
どちらから始めるかは、いま自分が何を使っているかで決めます。Notionで家計簿を1年つけている人は、その家計簿がそのまま1つめの商品の候補です。お店のチラシや投稿をCanvaで作ってきた人は、そのデザインの組み方が候補になります。片方に絞る必要はなく、慣れてから両方を並べている販売者もいます。
Canvaのテンプレートで売ってよいもの
Canvaの中にはたくさんのテンプレートがありますが、その色や文字を差し替えただけのものを「自分のテンプレート」として売ることはできません。Canvaヘルプ「Canvaを使って販売用のデジタルおよび物理的な製品をデザインする」では、売る商品はオリジナルのデザインである必要があるとしています。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 売れる | 白紙から作ったオリジナルのデザインを、テンプレートとして売る |
| 売れる | 無料の素材と、自分で用意した写真だけで作ったテンプレートを、PDFまたはCanvaのテンプレートリンクで売る |
| 条件つき | Canvaプロの素材を含むテンプレートは、Canvaのテンプレートリンクとして共有する形でだけ売れる |
| 売れない | Canvaプロの素材を含むテンプレートを、PDFなどのファイルにして売る |
| 売れない | Canvaの素材だけを、単独で売る |
※くわしい条件は、Canvaのコンテンツ使用許諾契約で確認してください。
王冠のマークが付いた有料の素材は、買った人が追加のお金を払わずに使えるかどうかにも関わります。はじめは無料の素材と自分で撮った写真だけで作ると、PDFでもテンプレートリンクでも売れて、売り方に迷いません。決まりに反した出品は、出品の停止やアカウントの停止につながるおそれがあります。
Notionでも、ほかの人が「再販してよい」として配っているテンプレートをもとにする場合は、配布元の利用条件を先に読みます。売ってよいのか、どこまで手を加える必要があるのかは、配布元ごとに違います。
売り物にする前に、自分の記録を見本のデータに入れ替える

ジャンルを決めたら、次はテンプレートの形に整えます。自分が使っているページやデザインには、自分の名前、金額、予定、お店の名前などが入っています。買った人が受け取るのは中身が空のテンプレートでも、出品ページの画像や見本の画面には、使っている様子が分かるデータが要ります。そのデータを、実在しない見本に入れ替えるのが最初の作業です。
Notionは、複製できる形で公開する
Notionのテンプレートは、ページを公開して、買った人が自分のワークスペースに複製できるようにして渡します。Notionのヘルプにある操作は、ページの「共有」から「Web公開」のタブを開いて「公開」し、「テンプレートとして複製」を有効にする流れです。
公開する前に、売る用のページを自分のページとは別に作ります。自分の家計簿をそのまま公開すると、毎月の支出も一緒に見えてしまいます。データベースの項目と計算の式だけを残し、中身は空にするか、見本のデータを入れます。使い方を書いた説明のページも、同じテンプレートの中に入れておきます。
見本のデータは、AIに作らせる
家計簿の画面を見本として見せるには、それらしい支出の記録が何十行も要ります。1行ずつ考えて打ち込むより、ChatGPTなどの文章を作るAIに、項目と条件を渡して作らせると早く用意できます。
指示文の例
Notionの家計簿テンプレートを販売します。出品ページの画像に使う、見本のデータを作ってください。
項目は〔日付、費目、金額、支払い方法、メモ〕です。〔ひとり暮らしの会社員〕の〔1か月〕分として、〔20〕行を表の形で書いてください。
条件:実在する店名、会社名、人の名前は使わないこと。費目は〔食費、日用品、交通費、通信費、趣味〕のどれかにすること。メモは10字以内にすること。
〔 〕は、自分のテンプレートの項目と、使う人の姿に替えます。タスク管理なら「タスク名、期限、状態、担当」のように、データベースの列の名前をそのまま並べます。出てきた表は、売る用のページに入力して、合計や集計の式が正しく動くかを確かめます。見本の数字が変だと、テンプレートの式がまちがっているように見えるので、合計の欄も目で確かめます。
Canvaは、長い文字を入れても崩れないかを確かめる
Canvaのテンプレートを買った人は、自分のお店の名前やお知らせの文に差し替えて使います。見本の文字が短すぎると、買った人が長い文を入れたときに枠からはみ出すことがあります。見本の文章は、文字数を決めてAIに作らせ、いちばん長い文を入れても読める配置かどうかを見ます。
指示文の例
Instagramの投稿テンプレートに入れる、見本の文章を作ってください。業種は〔美容室〕で、〔臨時休業のお知らせ〕〔新しいメニューの案内〕〔予約の空き状況〕の3枚分です。
1枚ごとに、見出しを〔12〕字以内、本文を〔40〕字以内で書いてください。各枚に、文字数がちょうど上限になる長めの案と、半分くらいの短い案を1つずつ出してください。
実在する店名や地名は使わず、店名は「〇〇」と書いてください。
〔 〕は、テンプレートを使ってほしい業種と投稿の種類に替えます。長い案と短い案の両方を入れてみて、どちらでも文字が切れず、余白が不自然に空かない配置にしておきます。出品ページには「見出しは12字まで入ります」のように、入る文字数の目安も書けます。
売り物にするテンプレートでは、配色や文字の配置の出来が、そのまま買う人の評価になります。Canvaでのデザインを順を追って学ぶなら、デジタルハリウッドがCanvaと共同で作った「Canvaデザインプログラム」があります。受講するとCanvaの有料のアカウントが12か月分付きますが、有料の素材を入れたテンプレートの売り方は、上の表の条件に合わせます。コースの内容は、公式サイトで確かめてください。
AIに任せないこと
AIに作らせるのは、見本のデータと見本の文章までです。テンプレートのページの組み方やデザインの配置は、自分で決めます。Canvaで売れるのはオリジナルのデザインで、そこが商品の中身だからです。CanvaのプランにはAIの利用枠も含まれていますが、その機能で作った部分を含むテンプレートを売るときの扱いは、当ブログでは確かめていません。使う前に、CanvaやNotionの公式ヘルプで確かめてください。
公開する前に、自分の名前、口座、予定などがページのどこかに残っていないかも、自分の目で確かめます。データベースのフィルターや、閉じてある下の階層のページに、自分の記録が残っていることがあります。使い方の説明には、自分がふだんどの順で記録し、どこを見て振り返っているかを書きます。そこは、実際に使ってきた人にしか書けない部分です。
似たテンプレートを色違いで何十個も並べる売り方にも気をつけます。BOOTHは、同じ作り方で作られ、ほかと差がない商品を出すショップについて、検索の結果に出さないことがあると知らせています。数を増やすときは、使う場面ごとに中身が違うものにします。
出品ページには、受け取り方と使ってよい範囲を書く
テンプレートは、買ったあとにリンクを開いて使い始める商品なので、受け取り方が分からないと問い合わせが増えます。当ブログで整理した、出品ページに書いておく項目を並べます。
- 受け取り方: 買ったあとに、Notionの複製用のリンクやCanvaのテンプレートリンクをどう渡すか
- 必要なもの: 無料のプランで使えるか、有料のプランが要るか
- 使ってよい範囲: 個人で使うだけか、仕事にも使えるか。人に配ったり、売り直したりしてよいか
- 返品: デジタルの商品の返品や返金に応じるかどうか
- 質問の受け付け: どこで受け付け、どこまで答えるか
画像は1枚だけでなく、全体の画面、記録を入れたところ、スマホで開いたところのように、使う場面ごとに何枚か載せます。前の章で作った見本のデータや文章は、ここで使います。
出品先ごとの住所の扱い
テンプレートをネットで売ることは、通信販売にあたります。消費者庁の「特定商取引法ガイド」では、通信販売の広告に、価格とそのほかに買う人が負担するお金、支払いの時期と方法、引き渡しの時期、返品などの決まり、事業者の氏名・住所・電話番号を表示するよう求めています。個人で売るときに気になるのは、住所と電話番号です。
| 出品先 | 住所・電話番号の扱い |
|---|---|
| BOOTH | 特定商取引法に基づく表記は必要。ただし、同法の「販売業者」に当たらない場合は、連絡先や住所を書く義務はない |
| STORES | 個人・個人事業主にかぎり、所在地と電話番号を非公開にできる(かわりにSTORESの所在地と電話番号が表示される)。氏名は非公開にできない |
| BASE | 区分が「個人」のショップは、住所と連絡先を非公開にできる(かわりにBASEの住所と連絡先が表示される)。買った人から求めがあれば、開示が必要 |
非公開にしていても、出品先への登録には、正しい住所と電話番号が要ります。自分が「販売業者」に当たるかどうか迷うときは、消費者庁の特定商取引法ガイドで確かめます。
1,000円で売れたときの手取り
価格は、出品先の手数料と合わせて決めます。まず、どのくらいの価格で並んでいるかの見当をつけます。
| 商品の種類 | 価格の目安 |
|---|---|
| Notionのテンプレート(タスク管理、家計簿、読書ログなど) | 500〜1,500円くらいが多い |
| Canvaのテンプレート(名刺、SNSの投稿、プレゼン資料など) | 500円から3,000円を超えるものまで(専門の分野向けは高め) |
| 何種類かをまとめたセット | 1,000〜2,000円くらいで並ぶことが多い |
※当ブログの見立てによる目安です。
1つの価格は高くないので、1つのテンプレートで大きく稼ぐより、何種類かを並べて積み上げていく形になります。
出品先の手数料
NotionとCanvaのどちらのテンプレートも、ダウンロードの商品やデジタルの商品を扱える国内の出品先で売れます。初期費用と月額がかからずに始められるのは、BOOTH、STORESのフリープラン、BASEのスタンダードプランです。
| 出品先 | 手数料 | 特徴 |
|---|---|---|
| BOOTH | サービス利用料5.6%+45円 | pixivと連携していて、創作物のジャンルと相性がよい |
| STORES | フリープランは決済手数料5.5%〜(月額0円) | ネットショップ全般を作れる。デジタルの商品も売れる |
| BASE | 決済手数料3.6%+40円と、サービス利用料3% | デジタルコンテンツ販売のAppを入れて売る |
| Gumroad | 直接販売は10%+0.5ドル、Discover経由は30% | 海外に向けて売る入口。国内向けには手数料が高め |
海外に向けて売るなら、GumroadのほかにEtsyもあります。Etsyは出品、販売、入金と手数料の項目が分かれていて、手元に残る割合は国内の出品先より低くなりやすいので、公式サイトで項目ごとに確かめてから選びます。
BASEは、初期費用と月額が0円のスタンダードプランで始められ、売れたときだけ手数料がかかります。プランの内容と手数料は、公式サイトで確認してください。
価格ごとの手取り
国内の3つの出品先で、手数料を引いた金額を価格ごとに並べます。
| 商品の価格 | BOOTH | STORES | BASE |
|---|---|---|---|
| 1,000円 | 899円 | 945円 | 894円 |
| 2,000円 | 1,843円 | 1,890円 | 1,828円 |
| 3,000円 | 2,787円 | 2,835円 | 2,762円 |
※当ブログの計算です。BOOTHは5.6%+45円、STORESはフリープランの5.5%、BASEはスタンダードプランの3.6%+40円とサービス利用料3%を、そのまま当てはめました。決済の方法によって料率が変わる場合があり、振込の手数料は別にかかります。
1,000円の商品では、3つの差は50円ほどです。BOOTHとBASEは1件ごとに決まった額(45円、40円)が引かれるので、価格が低いほど割合として重くなります。500円の商品を中心に売るか、セットにして1,000円を超える価格にするかを決めるときは、この決まった額も含めて計算します。
Notion公式のマーケットプレイスは、承認を待ちながら
Notionには、テンプレートを直接売れる公式の「マーケットプレイス」もあります。Notionヘルプ「Notionマーケットプレイスでテンプレートを販売する」によると、売り始めるには、順番待ちのリストに入り、Notionのチームの承認を受けてから、決済サービスのStripeと連携します。審査には数か月かかる場合があります。日本は対象の国に入っています。
手数料は8%と、取引ごとに40セントです。米国の外のクリエイターには、別に1%の外国為替の手数料がかかります。販売はすべて米ドルで、支払いは2週間ごと、最低の金額は20ドルです。すぐに売り始めたいなら、BOOTHなどに出しながら、承認を待つ進め方もできます。
売上の記録と申告
副業の所得(売上から経費を引いた金額)が1年で20万円を超えると、確定申告が必要です。20万円以下でも、住民税の申告は要ります。Canvaプロなどの有料プランの料金、出品先の手数料、テンプレートに使う素材を買った代金は、経費の候補になります。売れるたびに、価格と引かれた手数料を記録しておきます。売上の記録から申告の書類まで作れる会計ソフトの比べ方は、次の記事です。
おすすめの表示が外れたあとの売上
出品したばかりのテンプレートは、出品先の新着やおすすめの欄に出て、はじめのうちは売れることがあります。その表示が外れると、売上が落ちることがあります。
架空の進み方の例(実際の収益を保証するものではありません)
家計管理が得意なWさんが、Notionの家計簿テンプレートをBOOTHに1,200円で出品。最初の2か月はおすすめの欄から月2万円ほど売れたが、3か月目に表示が外れて売上が半分に。X(旧Twitter)で使い方の発信を始め、Canvaで作ったテンプレートのセットもSTORESで売り始めて、6か月目には月2〜3万円ほどで落ち着いた、という進み方が一つのイメージです。
※下の表は、当ブログの見立てによる目安です。
| 時期 | 1か月の売上 | その時期にすること |
|---|---|---|
| 出品から2か月目まで | 0〜2万円くらい | 1つめのテンプレートを出し、おすすめの表示などで反応を見る |
| 3〜4か月目 | 1〜2万円くらい | おすすめの表示が外れることもあり、自分で発信して人を呼び始める |
| 何種類かを並べ、発信が続いている | 2〜5万円くらい | いくつかのジャンルのテンプレートが、続けて売れる形に近づく |
当ブログでは、始めやすいぶん競う相手が多いこと、自分で人を呼ぶ作業が欠かせないこと、流行や季節で売れ方に波があることが、伸び悩む主な原因と見ています。だから、出品先の表示だけに頼らず、X、note、YouTubeなどで、作る過程やテンプレートの使い方を発信して、出品先の外から人を呼ぶ道を早めに作ります。新しいテンプレートの案内を、メールやLINE公式アカウントで届けている販売者もいます。
売れないときに見直すのは、競う相手の多いジャンルに埋もれていないか、出品ページの画像と説明で使い方が伝わっているか、Canvaのテンプレートが既存のものの流用になっていないか、の3点です。家計簿のような人気のジャンルなら「ひとり暮らし向け」「共働きの家計向け」のように使う人を絞ると、ほかの商品との違いが出せます。
まとまった収入がすぐにほしい人や、何か月も売上が読めない状態がつらい人には、合わない副業です。自分が使い込んできたページやデザインがあり、それを人が使える形に整える作業を、本業のあいまに少しずつ続けられる人に向いています。まずは、いま使っているNotionのページかCanvaのデザインを1つ選び、自分の記録を抜いた売る用のコピーを作るところから始めてみてください。



