AIで作った動画は、もう収益化できない。顔も声も出さずにチャンネルを始めようと調べるうちに、そんな言い切りを目にすることがあります。
AIアバター動画は、自分の写真から作ったアバターに、AIの音声で台本を読ませる解説動画です。カメラの前に立つことも、マイクに向かって話すこともありません。
収益化の対象から外れる動画と外れない動画は、どこで分かれているのか。その線引きには、ツールの選び方や台本の作り方、公開のときの申告も関わってきます。YouTubeのポリシーを開いて、実際の文面から確かめていきましょう。
AIアバターの動画とYouTubeの収益化ポリシー
YouTubeは2025年7月15日に収益化のポリシーを更新し、それまで「繰り返しの多いコンテンツ」と呼んでいた項目を「量産型のコンテンツ」(英語では inauthentic content)に改めました。AIアバターやAIの音声を使うことを、それだけで禁じる書き方にはなっていません。見られているのは、1本ごとに見る価値があるかどうかです。
YouTubeが収益化を認めない例
YouTubeヘルプ「YouTubeチャンネル収益化ポリシー」に挙がっている例のうち、アバターの解説動画に関わりが深いのは、下の3つです。
- 教育的価値、解説、ナレーションが不十分な、類似した内容や繰り返しの多いコンテンツ。または、動画ごとの違いがほとんどないコンテンツ
- キャラクターが何度も同じ状況に置かれ、同じ結末を迎える動画(複数の動画で、酷似したストーリー展開のテンプレートを使っている場合など)
- 説明、解説、教育的価値が最小限または皆無の、画像のスライドショー
同じヘルプは、テンプレートから作ったように見える動画や、同じチャンネルの動画を何本か続けて見たときにくり返しに感じられる動画も、「一般的、または繰り返しの多いコンテンツ」に入ると説明しています。アバターの見た目や声が毎回同じであること自体は、ヘルプの例には挙がっていません。動画ごとに変えていくのは、話の中身と組み立てです。
海外メディアの報道によると、2026年1月には、このポリシーのもとで16のチャンネル(登録者の合計は約3,500万人)が削除されました。報じられたのは、合成音声のナレーションと型どおりの台本で、大量に投稿していたチャンネルです。アバターを使ったかどうかより、同じ作りの動画を数で並べていたことが問われた例として読めます。
ポリシーに反すると判断されたときは、収益化の一時的な無効化や、YouTubeパートナープログラムからの解除・一時停止といった措置が取られることがあります。止められても、通知から21日以内なら再審査を求められます。求めなかった場合や、認められなかった場合は、30日たつと申し込み直せます(申請が何度も承認されなかった場合は90日後)。ただ、作り方を変えずに申し込み直しても、同じ判断になることが考えられます。申し込む前に、どの動画が問題とされたのかをYouTube Studioで確かめ、その動画を直すか削除しておきます。
顔と声の代わりになるツールと料金プラン
アバターを作るツールは、写真1枚から話す映像を作るものと、多くの言語で話させられるものに分かれます。収益化を目指すチャンネルに使うなら、料金の安さより先に、そのプランで商用の利用が認められているかを見ます。
| アバターのツール | 料金 | 向いている使い方 |
|---|---|---|
| HeyGen | 無料プランは月3本・1本1分まで。Creatorプランは月払いで月29ドル(年払いなら月24ドル) | 175以上の言語・方言に対応。同じ動画をほかの言語でも出したいとき |
| D-ID | 商用に使えるProプランは年払いで月16ドル。年払いで月4.7ドルのLiteプランは、個人での利用に限られる | 写真1枚から、話すアバターを手早く作りたいとき |
| Synthesia | Starterプランは年払いで月18ドル(月払いは月29ドル) | 研修の教材向けの機能(SCORM対応)が中心で、企業の利用に寄っている |
| Vidnoz | 無料で使える枠あり | お金をかけずに、アバターの動画がどう見えるかを試したいとき |
※ドル建ての料金は、各公式サイトの料金ページによります。円で払う額は、そのときの為替で変わります。
無料の枠で作った動画を収益化するチャンネルに載せてよいかは、ツールごとに違います。どのツールでも、試すのは無料の枠で済ませ、公開する動画を作り始める前に、利用規約で商用の扱いを確かめてからプランを決めます。
声と仕上げには、別のツールを組み合わせます。
| 声と仕上げのツール | 役割 | 料金 |
|---|---|---|
| ElevenLabs | 台本を読み上げるAIの音声。自分の声を学ばせた声も作れる | Starterプランは月6ドルで、商用のライセンスが付く。Creatorプランは月22ドル |
| CapCut | アバターの映像と素材をつなぎ、字幕を入れて書き出す | 無料のプランあり |
| Vrew | 音声から字幕を起こす。台本から動画の組み立てを手伝う | 無料のプランあり |
声を作るときは、自分の声か、使ってよいと決められた音声だけを使います。家族や知人など、ほかの人の声を学ばせる場合は、何に使うかを伝えたうえで、書面で同意をもらっておくのが望ましいとされています。断りなく使うと、権利の侵害を問われたり、動画を削除されたりするおそれがあります。
1本目の動画ができるまでの流れ
チャンネルの1本目は、下の5つの段階で作ります。

最初に決めるのは、チャンネルで扱う分野です。家計管理、仕事の効率化、AIツールの使い方のように、自分の仕事や暮らしで試したことを話せる分野を選びます。アバターが話すのは自分が書いた台本なので、話せる経験の量が、そのままチャンネルを続けられる本数になります。
AIに台本を頼むときの指示文
ChatGPTのようなチャット型のAIに台本を頼むと、整った文章が一気に返ってきます。ただ、そのまま読ませると、ほかのチャンネルと同じような説明になりやすく、収益化のポリシーで問われる「解説が不十分」「動画ごとの違いがない」に近づきます。AIに任せるのは話す順番の骨組みまでにして、中身を入れる場所は空けたまま返してもらいます。
指示文の例
次のテーマで、〔3〕分ほどの解説動画の台本の骨組みを作ってください。テーマ:〔会社員が家計簿を3か月続けるためにしたこと〕
・話す順番を、見出しだけで5つ以内に並べてください
・各見出しの下に、私の経験を書く場所を【経験: 】、私の考えを書く場所を【意見: 】として空けてください
・数字や統計は書かないでください。数字が要る場所には【数字:出どころを確かめて入れる】と書いてください
・「いかがでしたか」のような、どの動画にも使える締めの言葉は入れないでください
空欄は、自分で埋めます。実際にやってみてうまくいかなかったこと、続けるために変えたこと、人に勧めない理由のように、AIに聞いても出てこない話を入れるところです。数字を入れるときは、発表元のページで確かめたものだけにします。YouTubeのヘルプでは、台本や動画案の下書きにAIを使うことは、AIの使用を申告しなくてよい「軽微な制作支援」の例に入っています。
声を当て、映像と字幕を仕上げる
台本ができたら、AIの音声で読み上げ、アバターのツールで話す映像を作ります。読み上げを聞いて、人の名前や専門の言葉の読み方が違っていれば、台本をひらがなに直して読ませ直します。アバターの映像だけでは画面が単調になるので、話に合わせて図や画面の録画を差し込み、字幕を付けて書き出します。
差し込む映像を自分で撮れないときは、商用で使える素材を買う方法があります。PIXTAでは、ロイヤリティフリーの動画素材を購入できます。収益化するチャンネルでどこまで使えるかは、素材ごとのライセンスで確かめます。
2本目からの台本の見直し方
本数が増えるほど、自分でも気づかないうちに、出だしの決まり文句や話の運び方が毎回同じになっていきます。同じチャンネルを続けて見たときにくり返しに感じられることは、ポリシーで収益化を認めない例に入っていました。新しい台本を書いたら、公開済みの台本と並べて、似ているところをAIに洗い出させます。
指示文の例
次のAとBは、同じチャンネルで出す動画の台本です。Aは公開済みで、Bはこれから出すものです。BがAと似すぎているところを挙げてください。
・比べるのは、話の順番、出だしの一文、締めの一文、例として出している話、の4点です
・似ているところごとに、Aの文とBの文を並べて抜き出してください
・直し方の案は書かないでください
台本A:〔公開済みの台本〕
台本B:〔これから出す台本〕
直し方を書かせないのは、直すところに自分の言葉を入れるためです。挙がった箇所は、出だしを別の経験から始める、例を差し替える、話の順番を入れ替えるといった形で、自分で書き直します。比べる相手は、直前の1本だけでなく、同じ分野で出した何本かを順に替えて試すと、くり返しに気づきやすくなります。
公開の前には、台本のほかに次の点も見ておきます(当ブログで整理した項目です)。
- 映像・音楽・声を、仕事に使ってよい条件で用意したか(商用の利用、声の持ち主の同意)
- サムネイルとタイトルが、動画で話している中身と合っているか
- 公開の画面で、AIの使用を内容に合わせて選んだか(次の章)
台本の骨組みづくりや台本どうしの比較のように、AIへの頼み方しだいで結果が変わる場面は、続けるうちに増えていきます。頼み方を講座で学ぶ方法もあります。バイテックAIスクールには、画像と指示文から動画を作るAI動画クリエイターコースや、ChatGPT・Claudeの使い方を学ぶコースがあり、どのプランでも教材は期限なく見られます。受講料は公式サイトに出ていて、申し込む前に、オンラインの無料カウンセリングで相談することもできます。
公開の画面で、AIの使用を申告するかを選ぶ
YouTubeでは、動画をアップロードするときに、YouTube Studioの「属性」にある「AIの使用」で「はい」か「いいえ」を選びます。どちらを選ぶかの目安は、YouTubeヘルプ「生成AIコンテンツの使用に関する開示」に例で示されています。
| ヘルプの例 | 申告 |
|---|---|
| 実在の人物が、実際には言っていないこと・していないことを、言ったりしたりしているように見える | 必要 |
| 台本・動画案・サムネイル・タイトルの下書きに、生成AIを少し使った | 不要 |
| 字幕をAIで作った | 不要 |
| 自分の声をクローニングして、ナレーションや吹き替えにした | 不要 |
自分の声をもとにしたAIの声で台本を読ませるだけなら、ヘルプの例では申告は要らない側に入ります。一方で、写実的なアバターが人として話しているように見える映像は、作り方によって見え方が変わります。自分の動画がどの例に近いかをヘルプと照らし、判断がつかなければヘルプの説明を読み直してから選びます。申告を繰り返し意図的に怠ると、YouTubeがラベルを付けたり、コンテンツを削除したり、YouTubeパートナープログラムへの参加を止めたりすることがあるとされています。
同じ動画をTikTokにも載せるなら、TikTokの決まりも見ておきます。TikTokのコミュニティガイドラインでは、本物のように見える場面や人物が出てくる動画を、AIで作ったり大きく編集したりした場合は、作った人がラベルを付ける必要があるとされています。ラベルのない動画は、削除や表示の制限を受けたり、TikTok側でラベルを付けられたりすることがあります。写実的でない動画でも、全体をAIで作ったものや大きな部分をAIで編集したものは、開示するよう勧められています。人に似せたアバターが話す動画は本物の人物のように見えやすいので、ラベルが要るかを確かめてから投稿します。
YouTubeの収益化の条件と、届くまでにすること
広告の収益を受け取るには、YouTubeパートナープログラムに申し込みます。YouTubeヘルプにある申し込みの条件は、表のどちらかです。
| 主に出す動画 | 条件 |
|---|---|
| 長い動画 | チャンネル登録者1,000人以上、かつ直近12か月の総再生時間4,000時間以上 |
| ショート動画 | チャンネル登録者1,000人以上、かつ直近90日間のショート動画の視聴回数1,000万回以上 |
どちらの道でも、コミュニティガイドラインと収益化のポリシーを守っていること、収益化が認められている国・地域に住んでいることが前提です。TikTokで報酬を受け取るCreator Rewards Programは、18歳以上、フォロワー1万人以上、直近30日間の視聴10万回以上で、1分以上のオリジナルの動画が対象です。個人のアカウントであることも条件に入っています。
条件に届くまでは、収益はありません。その間に見ておくのは、動画が最後まで見られているかです。YouTube Studioで、動画ごとに視聴者がどこで離れているかを見て、出だしで多く離れているなら、最初の一文とサムネイルの約束が合っているかを直します。当ブログの見立てでは、動画の長さに対して平均で35%以上見られていることを、ひとつの目安にしています。
収益化できたあとの受け取り方は、広告の収益だけではありません。動画で紹介した本や道具を、概要欄の広告リンクから買ってもらうアフィリエイトも、組み合わせやすい収入です。
※下の表は、当ブログの見立てによる目安です。
| 時期 | 月の収益 | その時期にすること |
|---|---|---|
| 始めて2か月目まで | 0円程度 | 申し込みの条件に向けて、本数と再生時間を積む |
| 3〜4か月目 | 0〜1万円程度 | 条件に届けば申し込む。くり返しに見えない作りを優先する |
| 独自の切り口の動画を続けられたとき | 1〜5万円程度 | 週に数本のペースを保ち、経験と意見の入った動画を積み上げる |
広告とアフィリエイトが中心なので、同じ期間でも人によって大きく差が出ます。中身の違いが少ない動画を数で増やすと、収益化そのものが止まるおそれがあり、本数を増やすことが収益の近道になるとは限りません。
収益が出始めたら、ツールの利用料と一緒に月ごとの記録を付けます。会社員の副業では、所得(売上から経費を引いた額)が年20万円を超えると確定申告が必要で、20万円以下でも住民税の申告は要ります。アバターや音声のツールの利用料、編集ソフトの料金、マイクやパソコン(仕事に使う割合で分ける場合あり)は、経費にできる場合があります。帳簿付けを手伝う会計ソフトは、次の記事で並べて比べています。



