文章を書く副業を探すと、目に入るのは検索向けの記事の募集ばかり。けれど、受信箱に毎日届くお店からのメールも、誰かが書いた文章です。
メルマガ・ニュースレターの執筆代行は、お店や会社に登録している読者へ送るメールの文章を、代わりに書く仕事です。顔も声も出さずに、在宅で受けられます。
検索で読まれる記事と何が違い、メールの見本を持たない人は何を用意すれば頼んでもらえるのでしょう。1通のメールは、読者に何をしてもらうために書かれているのか。そこから考えていきます。
メルマガ代行で依頼される文章の種類
メルマガの読者は、送り手のお店や会社をすでに知っていて、自分で登録した人たちです。そのため、検索の言葉を意識するより、件名で開いてもらい、本文で予約・購入・申込みのどれか1つに進んでもらう組み立てが求められます。依頼される文章は、大きく分けて下の4種類です。
| 種類 | 中身 | 書くときに気をつけること |
|---|---|---|
| 定期メルマガ | 週1回・月2回など、決まった頻度で送るお知らせ・コラム・キャンペーンの告知 | 件名と本文の両方を書く。1通で伝える用件は1つにしぼる |
| ステップメール | 資料請求や無料登録のあと、決まった順番で自動で届く一連のメール。10通前後をまとめて頼む募集や出品も見られる | 何通目で何をしてもらうかという、全体の流れを先に決める |
| LINE公式アカウントの配信文 | メールより短い文で、クーポンや予約の案内につなげるメッセージ | 最初の数行で用件が分かるようにする |
| ニュースレターの代筆 | note・Substackなどで、依頼する人の名前で出すコラム | その人の口調に合わせる。書いた自分の名前は表に出ない |
文章だけでなく、配信ツールへの入稿と予約、開封率やクリック率の報告まで含めて頼まれることもあります。
SEO記事との大きな違いは、配信のたびに結果が数字で返ってくることです。数字を見て次の件名や構成を変えていくので、同じ依頼主から続けて頼まれやすい仕事です。配信ツールは、企業向けのBenchmark Emailや配配メール、ステップメールを組めるMyASP、LINE公式アカウントの管理画面(LINE Official Account Manager)などさまざまですが、依頼する人が使っているものをそのつど覚えれば足ります。
応募の前に用意する見本
始めるまでの順番は、下の図のとおりです。最初の2つは、仕事を受ける前に自分だけでできる準備です。

まず、自分が登録しているメルマガやLINE公式アカウントを3通ほど読み比べ、件名の付け方、冒頭の数行、リンクへの誘い方を書き出します。そのうえで、架空のお店や講座を想定した見本を作ります。「美容室の定期メルマガ1通」「オンライン講座のステップメール3通」「飲食店のLINE配信文1通」のように形式を分けておくと、応募先に合う見本をそのまま見せられます。
定期メルマガの見本は、次の骨組みに沿って書くと、1通に用件を詰め込みすぎずに済みます。
定期メルマガ1通の骨組みの例
件名:〔平日のお昼まで〕〔カットとトリートメントのご案内〕
あいさつ:いつもご来店ありがとうございます。〔店名〕の〔担当者名〕です。
用件(1つだけ):〔平日の12時までにご来店の方に、トリートメントをご用意しています〕。
くわしい中身:〔なぜ平日なのか〕〔どんな髪の悩みの人に合うか〕を2〜3文で。
してほしいこと:〔ご予約はこちらから〕と書き、予約ページへのリンクを1つ置く。
最後に入れるもの:〔店名〕〔住所〕〔お問い合わせ先〕と、〔配信の停止はこちら〕のリンク。
〔 〕は、想定するお店に合わせて書き換えます。最後の行は、このあと説明する特定電子メール法で、表示が求められている項目にあたります。見本の段階から入れておくと、決まりを分かったうえで書ける人だと伝わります。
メルマガの仕事を受ける場所と、1件目の探し方
見本がそろったら、図の3番目の「応募・出品」に進みます。受ける場所で、金額の決まり方と自分の手間が変わります。
| 受ける場所 | すること | 金額の目安(依頼する側が払う額・出品の価格) | 合う人 |
|---|---|---|---|
| クラウドソーシング | クラウドワークスやランサーズで、「メルマガ」「ステップメール」の募集に応募する | メルマガ1円〜/文字(クラウドワークス「発注相場」)、DM・メルマガ作成20,000〜40,000円(ランサーズ「仕事の種類・参考価格」) | 応募しながら評価をためたい人 |
| ココナラに出品 | 「メルマガを書きます」「ステップメールを作ります」と出品し、依頼を待つ | 1通3,000円〜2万円ほどの出品が多い。ステップメール10通で20万円の出品の例もある | 得意な業種や形式が決まっている人 |
| 直接の契約 | 知人の紹介や、続けて頼まれた依頼主と、月ごとの契約を結ぶ | 月4通前後で月2万〜5万円ほど(当ブログの見立てによる目安。受ける範囲で変わる) | 企画や数字の報告まで任されたい人 |
検索で目立つ「メルマガ代行」の月額料金は、企業が代行会社に払う金額で、配信の設計や分析まで含まれています。個人が1通を書いて受け取る金額は、上の表の水準から、さらに手数料を引いたものです。
クラウドソーシングの募集は、単価の幅がかなり大きめです。当ブログがランサーズの「DM・メルマガ作成」の一覧を見たときには、美容室の会員向けメルマガ(4,000〜5,000円・継続依頼あり)、お金の学びのメルマガ(500〜600円・継続依頼あり)、工務店向けのステップメール一式(6万〜7万円・単発)が並んでいました。最初の1件は実績づくりと割り切り、1通にかかった時間を記録して、時間で割って低すぎる募集は続けないと決めておきます。応募文には、前の章で作った見本の3つと、その募集に合わせた件名の案を2〜3個添えます。
ココナラに出品するときは、「楽天ショップのメルマガ」「オンライン講座のステップメール」のように対象をしぼると、依頼する人が自分に合うかを判断しやすくなります。サービスの説明には、対応する業種、1通の文字数、直しの回数、納期、追加の料金がかかる条件を書いておきます。
ココナラへの出品は、無料の会員登録をすませたあと、「出品者情報」を登録すると始められます。
直接の契約では、「月に何通書くか」「配信ツールへの入稿と予約まで受けるか」「数字の報告を付けるか」「直しは何回までか」を契約書に書いておくと、頼まれることがなし崩しに増えるのを防げます。クラウドソーシングで知り合った依頼主と、サイトの外で直接契約を結ぶことは、各サービスの規約で制限されている場合があります。移る前に、使っているサービスの規約を読んでおきます。
手元に残る金額は、手数料を引き、かかった時間で割って見る
上の表の金額は、依頼する人が払う額か出品の価格です。受け取るときは、サービスごとに次の手数料が引かれます。
| 受ける場所 | 引かれる手数料 | 例 |
|---|---|---|
| クラウドワークス | 同じ発注者との契約金額のうち、10万円以下の部分は20%、10万円を超え20万円以下の部分は10%、20万円を超える部分は5%。別に消費税がかかる | 税抜1万円の契約で、受け取りは8,580円 |
| ランサーズ | 契約金額(税込)の16.5% | — |
| ココナラ | 販売価格の22%(税込) | 5,000円の出品が売れて、手取りは3,900円 |
たとえばクラウドワークスで1通3,000円のメルマガを受けると、利用料600円とその消費税60円が引かれ、受け取りは2,340円です。書くのに2時間かかったなら、1時間あたり1,170円になります(当ブログの計算)。同じ依頼主から続けて受けて、契約金額が10万円を超えた分からは引かれる割合が下がるので、1通ずつ別の人から受けるより、同じ人の配信を続けて受けるほうが手元に残る割合は上がります。直接の契約には手数料がない一方、請求書を出すことと入金を確かめることは、すべて自分でします。
クラウドワークスとランサーズで、契約の金額ごとに手元に残る額を並べた表は、次の記事にあります。
会社員が副業で受けるなら、1年の所得(売上から経費を引いた額)が20万円を超えた年は、所得税の確定申告をします。20万円以下の年も、住民税の申告は別に要ります。法人の取引先からインボイス(適格請求書)の登録を求められたときは、登録すると所得の額にかかわらず消費税の申告と納税が要ることを踏まえて決めます。練習のために契約した配信ツールや、文章の書き方の本の代金は、経費にできる場合があります。
帳簿と申告の書類を作る会計ソフトの選び方は、次の記事で比べています。
1通を書く流れ。AIに任せる下書きと、自分で確かめるところ
受けた1通は、依頼の中身を聞く → 流れを決める → 本文を書く → 件名を選ぶ → 決まりを満たしているか確かめる → 納める、の順に進みます。流れの案出しと件名の候補出しは、生成AIに手伝わせやすい作業です。
ステップメールでは、本文を書く前に、何通目で何を伝えるかの表を作ります。最初に表を依頼する人と決めておくと、5通書いたあとで流れから作り直すことを避けられます。
指示文の例(ステップメールの流れ)
〔オンラインの家計相談〕に無料登録した人へ、登録の直後から自動で届くステップメールを〔5〕通書きます。最後の通で〔初回の個別相談〕に申し込んでもらうのが目的です。1通ごとに「登録から何日目に届くか」「その通で伝えること1つ」「読者にしてもらう行動1つ」を表にしてください。同じ話を2通に分けないこと、まだ伝えていない話を前提にしないことを守ってください。サービスの効果や料金にふれる部分には、中身を書かずに〔依頼者に確認〕と入れてください。
出てきた表は依頼する人に見せ、伝える順番と申込みに誘う通を決めてもらいます。本文は、決まった表をもとに、依頼する人の口調で自分が書きます。
件名は、本文を書き終えてから考えます。本文にないことを件名で言うと、開いた読者の期待とずれるからです。
指示文の例(件名の候補)
次は、〔駅前の美容室〕の会員に送るメルマガの本文です。この本文に合う件名の候補を〔8〕個出してください。長さは〔全角25字〕以内にし、本文に書いていないこと(割引の額、期限、効果など)は件名に入れないでください。候補ごとに、本文のどの文をもとにしたかを横に書いてください。
本文:〔ここに本文を貼る。お客さまの名前やメールアドレスは入れない〕
もとにした文を示せない候補は外し、残った中から2〜3案を選んで、本文と一緒に依頼する人へ出します。どの件名で送るかは、依頼する人が決めます。
反対に、AIには任せず、自分の手と目でする作業もあります。
| 自分でする作業 | 理由 |
|---|---|
| 読者のメールアドレスや名前が入ったリストを扱う | 預かった個人の情報なので、AIのツールには入れない |
| 送り手の名前・住所・問い合わせ先・配信停止の案内が入っているかを見る | 特定電子メール法の表示にかかわる。最後は原稿とテンプレートを目で確かめる |
| 「必ず」「今だけ」のような言い回しや、数字の根拠を確かめる | 景品表示法や薬機法にかかわるので、依頼する人に根拠を聞く |
| 配信の予約と、配信のボタンを押す | 送ったメールは取り消せないので、押す人を先に決めておく |
| 配信結果の数字を報告に書く | 管理画面に出ている数字を、自分で写して報告する |
AIを使ってよいかは、案件ごとに確かめます。クラウドワークスでは、AIを使った仕事そのものは禁止されておらず、使うかどうかは発注者との取り決めに任されています。受注者には、使う前に発注者の考えを聞くこと、使ったことを伏せないこと、募集文やメッセージで使い方を指定されたらそれに従うことが求められています。依頼主のお店の情報のように外に出せない内容をAIのツールに入れるときは、その扱いにも気を配るよう書かれています。
場面ごとの頼み方を自分で組み立てるのが難しいと感じたら、講座で学ぶこともできます。DMM 生成AI CAMPの「学び放題」は月額16,280円(税込)で、入会金はなく、最低の契約期間の縛りもありません。
広告のメールの決まりと、代筆で確かめること
メルマガの多くは、商品やサービスの案内を含むメールを大勢に送るものです。法律の上で責任を負うのは主に送る側の事業者ですが、原稿を書く人は、決まりが守られた文面になっているかを確かめる立場にいます。図の4番目で、受けたらすぐに下の点を依頼する人と確かめます。
- 特定電子メール法: 営利のための広告や宣伝のメールは、原則として、前もって受け取ることに同意した人にしか送れません。同意があったことの記録を残しておくことも求められます。本文には、送り手の氏名か名称、受信を拒否するための連絡先(メールアドレスかURL)と拒否できること、送り手の住所、苦情や問い合わせの窓口を表示します。送り手の情報を偽って送ることや、国の命令に従わないことには、1年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金(法人は3,000万円以下の罰金)が定められています。決まりの対象には、送信を頼んだ事業者も含まれます。配信の作業まで受けるときは、読者が同意して登録した人かどうかも聞いておきます
- 広告の言い回し: 「必ず痩せる」「今だけ半額」のような書き方は、景品表示法(実際よりよく見せる表示や、得だと思わせる表示)や、健康食品・化粧品では薬機法にふれるおそれがあります。根拠を示せない数字や言い切りは、依頼する人に確かめてから使います
- Gmailの決まり: Gmailあてに1日5,000件を超えて送る送り手には、ワンクリックで配信を止められるようにすることや、迷惑メールと報告される割合を0.3%未満に保つことなどが求められています。配信停止のリンクを、原稿の段階で消さないようにします
- LINE公式アカウント: メンバーの権限には「管理者」「運用担当者」「運用担当者(配信権限なし)」「運用担当者(分析の閲覧権限なし)」があり、原稿を作るだけなら配信権限なしで参加できます。パスワードを預かるのではなく、管理画面から送られる招待のURLで参加します。また、料金のプランごとに月に送れる通数が決まっていて、無料のコミュニケーションプランは月200通までです。配信の回数や送る相手のしぼり方は依頼する人の費用にかかわるので、配信文の本数と一緒に決めます
- 代筆の名前と著作権: ニュースレターの代筆は、依頼する人の名前で配信されるのがふつうです。自分の実績として見せてよいか、原稿の著作権をどちらが持つかは、契約のときに決めておきます
誇張した言い回しが混ざっていないかの点検には、文章を点検するツールも使えます。文賢には、トラブルにつながるおそれのある表現を指摘する機能があると、公式は説明しています。法律に合っているかを最後に判断するのは依頼する事業者なので、指摘が出た箇所は、依頼する人に確かめてもらいます。
配信のあと、数字を見て次の1通を提案する
配信が終わったら、図の5番目、数字の振り返りです。ここで注意したいのが開封率です。Apple Mailの「メールプライバシー保護」を使っている読者については、送り手がメールを開いたかどうかを正しく知ることができないため、開封率は実際とずれることがあります。報告では、リンクがクリックされた数や、その先の予約・申込みの数を主にして、開封率は参考として添えます。
配信後の報告の例
〔10月第2週〕に配信したメルマガのご報告です。いちばんクリックが多かったのは〔予約ページへのリンク〕で、〔◯〕件でした。そこからのご予約は〔◯〕件です。開封の数は、読者のメールアプリの設定によって実際と違うことがあるため、参考として〔◯〕件と添えます。
次回は、件名に〔用件を先に書く形〕を試し、予約のリンクを〔本文の前半〕にも置く案を考えています。よろしければ、次の原稿はこの形でお出しします。
改善の案まで出せるようになると、1通ずつの依頼から、月に何通と決めた続けての契約に移りやすくなります。そのときは、記録してきた1通あたりの時間をもとに、受ける範囲と金額を相談します。作業が増えて金額が同じままだと、1時間あたりの手取りが下がるからです。
選ばれるには、「何でも書けます」より、「美容・健康のお店のステップメール」「ネットショップのセールの告知」のように、得意な業種と形式を言えるようにしておきます。
書いた件名や本文の弱いところは、自分では気づきにくいものです。人に直してもらいながら書く力を上げたいなら、添削つきの講座もあります。「あなたのライターキャリア講座」(株式会社YOSCA)は、8回の講義に沿って進み、課題を出すと5回まで添削を受けられます。コースは、動画で進めるセルフコース(一括49,800円・税込)と、オンラインの講義つきのマンツーマンコース(一括185,000円・税込)の2つで、申し込む前に無料で相談できます。
まずは、自分が登録しているメルマガを3通読み、上の骨組みの例に当てはめて、美容室の定期メルマガの見本を1通書いてみてください。



